2016年、個展「HORSE RACING」の東京・銀座開催を終えて息をつく間もなく向かったのがアメリカ西海岸。
サンタアニタパーク競馬場で行われるブリーダーズカップの取材のためだったが、今にしてみるとその後の写真撮影のターニングポイントはここにあったように思う。
4月に香港、5月に上海と海外取材は重ねていたが、ついにアジアを飛び出ることとなったのだが、20代の頃には漠然と「そのうちにロンシャンで凱旋門賞見に行くのがアジアを飛び出る機会かな」と思っていた。自分の中ではヨーロッパに行くというのがひとつの夢だったし、まさか先にアメリカへ行くことになるとは思わなかった。人生そんなことの繰り返しなんだろうけど。
まだ漆黒の闇に包まれたカリフォルニア。アメリカで初めて迎える朝。メディアバスに乗り、各国のメディアの面々と交わす「Good Morning!!」この一言がこんなにも気持ちの良いものだとは思わなかった。今でも英語は苦手なほうだが、このときの経験が今の自分に活かされているのは間違いない。
競馬場についてもまだ暗いなか、メディアルームに場所を確保してカメラを準備する。
ゴールポストの先から空が明るみ始める。厩舎からぞくぞくと馬たちがコースに歩を進める。朝日に照らされる人馬の美しさに一心不乱にシャッターを切る。このとき、この地に足を運べた幸せを感じた。コース脇を歩きながら、アングルを探していると馬上から呼びかけられる。「Good Morning!!」とっさに私も応えながらカメラを向ける。すると馬上に笑顔が溢れた。自分が撮影したい瞬間がそこにあることを感じた。物怖じせずに言葉を送ることで、相手と繋がれる。単純なことだけど異国の地だからこそその大切さに気づけたのだろう。